殺風景なトイレから卒業! プロが教えるトイレのカラーコーディネートのトリセツ


お話を伺ったのは

矢田部倫子

矢田部倫子

色彩活用研究所株式会社(iro-labo)専任講師
大学で環境デザインを学ぶ中で色に興味を持ち、建築関係の仕事を経て現職。
専門分野を活かして、グラフィック・建築カラープランナーとしても活躍中。
伝統色の美しさに惹かれ「和」をテーマにした授業も企画している

空間イメージのカギを握るカラーコーディネート

リビングやキッチンなど、自宅の空間はセンス良くまとめたいものですよね。インテリアや小物使いでセンスを感じさせる、という方法もありますが、じつは“色の使い方”にこだわるだけで、空間はぐっとセンス良くなります。

今回は「おしゃれにしづらい」と思われがちなトイレを、“色”を意識することでセンス良くまとめる方法をカラーコーディネーターの矢田部倫子さんにお伺いしました。

トイレ空間は、便器、手洗器、トイレアクセサリー、壁・床、装飾小物など、さまざまなものによってイメージが決まります。その中でも、空間を構成するアイテムそれぞれが持つ‟カラー”は、部屋の第一印象を決める重要な要素です。

トイレでカラーコーディネートが重要な理由

トイレは一日に何回も使用する空間です。快適に過ごすため、インテリアグッズや収納にこだわる人も多いでしょう。そこで、意外と盲点なのがカラーコーディネート。白一色になりがちなトイレ空間ですが、実は色の使い方を意識してみることで、簡単にトイレのイメージチェンジが可能だそうです。
トイレ空間においてカラーコーディネートが重要な理由とは何なのでしょうか?

「まず、トイレは基本的に狭い個室ですから、閉塞感をなくすため、空間的な広がりを作ってあげることが大切です。色の印象や効果を使えば、視覚的にトイレを広く見せることが可能になりますよ。また、トイレも家の一部として、他の部屋とあわせてトータルコーディネートをするのも素敵ですし、逆に独立した個室だからこそ、トイレだけ雰囲気を変えて個性を出すのも魅力的でしょう。いずれの場合も、他の部屋と色使いを統一したり、あえて変化をつけたりすることで、トイレの印象をグッと変えることができます。狭い空間だからこそ、カラーが持つ視覚効果や心理効果の大きさが、トイレのイメージを左右する重要な要素になるのです」(矢田部さん)

色彩一覧

カラーは配色で与える印象が異なる

普段私たちが大まかに「色」や「カラー」と言っているのは、「色相(しきそう)」というもので、赤・黄・青といった色みの違いを指すものです。色相を円に並べて配置したものを、「色相環」と言います。色相は単体でもそれぞれイメージを持ちますが、組み合わせによっても印象や効果が変わります。カラーの組み合わせ(配色)ごとの一般的なイメージや特徴を矢田部さんに伺い、以下にまとめました。

・同系色の配色…色相環で隣り合うなど、近い位置にある色同士。先述の色相が持つイメージが強調されることが多い。色みが似ているので組み合わせやすい。

・補色の配色…色相環で向かい合う位置にある色同士。お互いの鮮やかさを引き立たせる最強の配色と言われている。ただし、鮮やかな色同士では目がチカチカする「ハレーション」が起こることもあるので、トイレに取り入れる場合は薄い色同士を使うのがオススメ。

・明るさのコントラスト…ライトベージュとダークブラウンの組み合わせなど、同じ色みで明度(明るさの度合い)が違う色同士(明暗の濃淡を使った配色)。明るい色のほうが、よりいっそう明るく見える効果がある。ただし、明るい色同士を組み合わせるとぼんやりして見えることも。

・多色配色…例えばストライプやボーダー、花柄など、数種類の色の組み合わせ。明度や彩度(色の鮮やかさの度合い)が高いと、元気、活発、楽しいなどのイメージを与える。反対に明度や彩度が低いと、落ち着きやスタイリッシュさを感じさせる。

明彩一覧

「好きな色や 柄などがある場合は、壁紙や床に取り入れて、その色や柄に合う小物をそろえていくという方法も良いでしょう。ただ、トイレは狭いので、全面に激しい色や柄を使うと、気持ちが萎縮してしまうかもしれません。淡い色を選んだり、柄の面積を減らしたりと工夫してみてください。色を組み合わせたいときは、明度と彩度が同じ(トーンが同じ)色同士を使うのが調和しやすいのでオススメです。例えば、ペールトーンは「かわいい、優しい」など、トーンにもそれぞれイメージや効果があるので、ねらいに応じて選んでくださいね」(矢田部さん)

トイレのカラーコーディネートの3つの黄金法則

トイレの場合、他の部屋に比べて空間が狭く、カラーを使えるポイントは便器・手洗器などの設備機器、床、壁、天井、空間内にあるアイテムなど、数が限られており、カラーを選ぶのが難しいですよね。そこで、矢田部さんにトイレのカラーコーディネートを成功させる3つの法則をお聞きしました。

法則1 マット、カバー、タオルの3点セットの色をそろえる!

「壁や床が白系統の場合、トイレのマット、カバー、タオルの色をすべて好きな色にそろえるだけでも、雰囲気は簡単に変わりますし、統一感が出ます。色が点在してアクセントにもなるので、お子様やお年寄りの視認性を高め、トイレを安全に使ってもらいやすくする効果もありますね」(矢田部さん)

法則1 マット、カバー、タオルの3点セットの色をそろえる!

プランに使用されているトイレはINAXのリフォレです。

法則2 座ったときの目線より少し上にアクセントとなるカラーを!

「一般的に、トイレ空間は横(前後左右)に圧迫感がある場合が多いので、縦(上下)に広がりを持たせるようにすると、開放感が生まれます。人は目線が上がると広がりを感じる傾向があるもの。壁の上のほうに、目を引く色の絵やフォトフレームなどを飾れば、そこに意識が向いて、トイレを広く感じられる効果がありますよ。絵やフォトフレームの色は、すでにトイレ内に取り入れている1色を使えば、違和感なくコーディネートできるはずです」(矢田部さん)

法則2 座ったときの目線より少し上にアクセントとなるカラーを!

プランに使用されているトイレはINAXのリフォレです。

法則3 悩んだら白やアイボリーをメインに、床だけ遊ぶ!

「カラーコーディネート初心者の方や、やってみたいけど難しくてよくわからないという方は、白やアイボリーで全体を統一しておくと安心でしょう。白は光をたくさん反射させるので、トイレ空間に広がりを感じさせる効果があります。また、汚れがつくと目立つ色ですから、トイレを綺麗にして清潔さを保とうとする意識もキープしやすいはず。もし、『白一色だと寂しいな』と思うなら、面積が狭い床にだけ色や柄を取り入れるのが、手軽なイメージチェンジの方法です。リフォームで、床をリビングや居室のフローリングに近い感じにすると、家全体の統一感も生まれますよ。トイレの場合、白&茶をベースに、観葉植物の緑をアクセントにするナチュラルテイストの組み合わせが簡単で人気ですね」(矢田部さん)

法則3 悩んだら白やアイボリーをメインに、床だけ遊ぶ!

プランに使用されているトイレはINAXのサティスSタイプです。

トイレリフォームのときはカラーコーディネートを意識

矢田部さんいわく、「トイレのカラーコーディネートだからといって、絶対に使っちゃいけない色などの決まりはなく、自由です。もしもインテリアの思いきったカラーコーディネートにチャレンジしてみたいなら、狭くてリフォーム金額もそこまで高額ではないからこそ、まずトイレで試してみることをオススメします。試してみて気に入ったカラーコーディネートを、ぜひ他の居室にも取り入れてみてくださいね」とのこと。

トイレをセンスの良いお気に入りの空間にできると、毎日を気分良く過ごせるようになりますね。カラーコーディネートを行う際は、どんな空間にしたいかを考えて、そのイメージをもとに色を選んでいきましょう。
また、トイレリフォームを行えば、便器や手洗器、床、壁のカラーに自分の好み通りの色や柄を取り入れることもできるので、好きなテイストに思う存分カスタマイズした空間が実現できます。理想のイメージが浮かんだら、ぜひリフォームも検討してみてください!

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