マンション選びこれさえ見れば安心!水まわりのチェックリスト
水まわりは毎日何度も使う場所なので、少しでも不便を感じると、不満がたまりやすいものです。そうならないために、中古マンションを内見する際は、水まわりの設備の不安要素を見つけておき、できればリフォームしたいという方も多いはず。しかし、具体的にどこをチェックすればいいのかわからない、という方も多いのではないでしょうか。そこで今回は一級建築士の井上恵子さんに、内見時に水まわりでチェックすべきポイントをお聞きしました。
取材にご協力いただいたのは
井上恵子さん
住まいのアトリエ 井上一級建築士事務所主宰
マンション設計に関わった経験を数多く持つ一級建築士/インテリアプランナー。設計事務所設立後はWebサイトや雑誌、新聞、セミナーなどで安心・安全な住まい選びの情報を発信中。子育て経験を生かして保育園の設計・工事監理なども行う。
水まわりは劣化が早く細かいチェックが必須
水まわり(キッチン、バスルーム、トイレ)は生活に欠かせない場所ですが、使用頻度が高く、さらに水を使うために経年劣化が避けられない場所でもあります。
「物件の見学をする時には、『ここはどんな使い方をするか』『ここはどんなふうにリフォームしたいか』と具体的な視点を持って、水まわりの設備を見ておくことが大切です。もし将来的に、大がかりなリフォームをする可能性があるなら、床下や天井裏に空間があり、設備配管や配線を移動できる「二重床」、「二重天井」になっているかを必ず確認しましょう。また『水まわりは後でリフォームするから大丈夫』と内見時にしっかりチェックしない方もいらっしゃいますが、壁の材質や給排水管の位置との関係で、ご希望のリフォームができない場合もあるので注意が必要です」(井上さん)
下記の図は、水まわりでチェックすべきポイントをまとめたものです。ここからは、キッチン、バスルーム、トイレそれぞれのチェックポイントについて解説します。
キッチンのチェックポイント
バスルームのチェックポイント
トイレのチェックポイント
水まわり共通のチェックポイント
キッチンは使い勝手を中心にチェックする
キッチンのチェックポイント
キッチンでまずチェックしたいポイントは、使い勝手に関わる部分です。収納スペース、コンセントの位置・数など、自分にとって使いにくい部分がないかチェックしておきましょう。ここでは物件購入後に「使いにくい」と感じやすいポイントをご紹介します。
コンセントの位置・数は適切か
「キッチンでまずチェックしたいのが、コンセントの位置です。冷蔵庫や電子レンジなど、家電を置きたい場所の近くにコンセントがあるか、また数が足りているかを確認しましょう。コンセントを設けたい壁がコンクリートでできている場合、コンセントの位置を変えたり増やしたりすることが難しいこともあるので、注意が必要です。コンセントの増設が可能かは、内見時に確認しておきましょう」(井上さん)
収納スペースは十分にあるか
「キッチンは、食器や調理用具、調味料や食料品などをきちんと収納できるとすっきりします。食器棚をおくスペースや、吊り戸棚・パントリーなど収納スペースの量が十分にあるかどうかを確認しましょう」(井上さん)
リフォームプランとパイプスペースの位置関係をチェックする
「給水管や排水管は、水まわりの近くにあるパイプスペース(PS)という空間の中を通っています。もし「キッチンの位置を大きく変えたい」という希望がある場合は、シンクとPSが離れすぎていると実現が難しい場合もありますので、それらの位置関係を確認してください。また、蛇口をひねって水を出し、水の色やニオイを確かめておきましょう。水が濁ったりニオイがしたりしていると、給水管が劣化している可能性があります。視覚と嗅覚でしっかりチェックしてください」(井上さん)
バスルームは湿気が多く、見えないところで経年劣化が進んでいることも
バスルームのチェックポイント
水まわりの中でも、バスルームは湿気がこもりやすくカビが発生しやすい場所です。一見キレイに見えても、細かい部分の劣化を見逃さないようチェックする必要があります。
換気扇があり、きちんと作動するか
「バスルームの換気機能が低いと、カビが発生しやすくなります。一見キレイに掃除されていても、壁や床にカビの跡がないかよく観察しましょう。一般的に換気扇は10~15年で交換期となるため、換気機能がうまく働いていない場合は取り換えも視野に入れておきましょう。また、最近では換気だけでなく、暖房や乾燥などの性能を持つ換気扇も出ています。それらの取付けが可能なのかも確かめておくと安心です」(井上さん)
浴槽の使用状態・機能
「マンションで使用されている浴槽は一般的にFRP(繊維強化プラスチック)素材が多く、長年使用しているとキズやヒビが入ることもあります。大きなキズやヒビは水漏れの可能性があるので、なるべく早めに修理したほうがよいでしょう。また機能面においても、追いだき機能や湯張り機能などを希望する場合、そういった機能があるのかもあわせて確認しておきましょう」(井上さん)
バスルームと浴槽の広さは十分か
「バスルームや浴槽の広さが自分や家族に適切かどうかをチェックしましょう。もし狭いと思ったら、壁の位置を移動してバスルームを広くリフォームすることも可能ですが、マンションの場合、壊せる壁と壊せない壁があるので、内見時に確認しておきましょう」(井上さん)
トイレリフォームに備えて便器以外もチェック
トイレのチェックポイント
トイレは最も使用頻度が高い住宅設備のひとつです。便器に関しては住みはじめに交換したいと希望される人は多いですが、その他の部分も傷み具合によっては、同時にリフォームしてしまったほうがよいことも。ここからご紹介するチェックポイントを確認してみてください。
床・壁に変色はないか
「まず便器周辺の床と壁に変色している部分がないかチェックしてください。その変色は尿が長年染み付いた跡で、ニオイの原因になっている可能性があります。また便器と床が接している部分は、便器に付く結露の水滴によって、特に傷みやすい部分です。それらが気になった場合は、便器の交換と同時に床・壁の仕上げ材も新しくしてしまうのも良いでしょう」(井上さん)
トイレの広さは適切か
「まれに、座るとひざが前の壁にぶつかりそうになるほど狭いトイレがあります。実際にトイレで立ち座りの動作をしてみて、トイレの広さをチェックしましょう。タンク付き便器の場合、タンクレスに変更すると空間が広くなります。また、来客の多いご家庭では、トイレ内に便器とは別にカウンター付きの手洗器を設け、簡単なお化粧直しができるパウダールームとしてしつらえておくのも良いでしょう。いずれにしろトイレ空間を広げたい時は、その他の水回りと同様に、周囲の壁が壊せる壁かそうでない壁なのか、材質を確認しておくことが大切です」(井上さん)
既設トイレの使い勝手が適しているか
「予算の都合上、入居後すぐにリフォームはせず、しばらくはそのトイレを使用していくこともあると思います。実際に座ってみた時のフィット感や、シャワートイレ・暖房便座などの機能面、コンセントの有無を確認しておきましょう」(井上さん)
水まわりのチェックは五感をフルに使おう
内見時に水まわりをチェックする時は、実際に設備に手をふれて使ってみて、使い勝手を確認すると同時に、不快なニオイはないか、給排水時の音は問題ないか、カビなどの汚れの跡の有無などを、五感を使ってチェックしましょう。
「細かい話ですが、水まわりの音は思っている以上に響くものなので、間取りによっては水まわりの音が苦情につながるケースもあります。例えば、トイレと隣戸の寝室が隣合わせの配置になっている場合などです。このような音の問題を回避するためにも、隣や上下階の住戸の間取りも確認しておくとさらに安心です」(井上さん)
水まわりでリフォームするならトイレから
中古マンションを購入する際、駅からの距離、間取り、価格など、ほとんどの条件がマッチしているのに、水まわりの劣化が目立って気になる場合はリフォームで解決することができます。
「水まわりのリフォームでどこから着手しようか悩んだら、まずはトイレから始めることをおすすめしています。トイレは一日の中でも使用回数が多く、お客さまの目にも触れやすい場所です。清潔で使いやすい、快適空間にしたいですよね。それに小さな空間ですから、初めてリフォームをする人にとっても、取り掛かりやすい場所といえます」(井上さん)
下記のページではトイレリフォームにかかる手間や時間を解説しています。トイレは水まわりの中でも比較的簡単にリフォームできます。トイレリフォームに興味を持った方は参考にしてください。