中古マンション選びの4箇条 長く快適に住める中古マンションの選び方
中古マンション購入の際、できれば長く快適に住みたいですよね。実は物件購入後に住み心地を左右するのは「共用部分」「間取り」「水まわりの設備」「断熱」の4点です。
なぜこの4点が住み心地を左右するのか、物件選びの時点で確認する方法があるのかなどを、一級建築士で住宅リフォームコンサルタントの尾間紫さんにお聞きしました。
取材にご協力いただいたのは
尾間紫さん
一級建築士事務所 OfficeYuu代表
一級建築士、 インテリアコーディネーターとして数多くの住宅リフォームの現場やインテリア、設計、工事に携わる。現在は住宅リフォームコンサルタントとして、快適な住まいづくりのノウハウをテレビや雑誌、新聞連載、講演などを通して発信中。
なぜ「共用部分」「間取り」「水まわりの設備」「断熱」が重要?
長く快適に住める家には、どんな性能が求められるのでしょうか?一級建築士で住宅リフォームコンサルタントの尾間さんは「夏に暑い家、冬に寒い家は健康に悪影響を及ぼします。住まいの快適性は断熱性がポイントですので、健康に暮らすためにはしっかりチェックする必要があります。また共用部分は今後の維持管理や美観、資産価値にも影響を与えます。そして間取りや水まわりの設備は毎日の暮らしやすさに直結しています。中古マンションの場合は、見た目がキレイでも機能は劣化している可能性もあるので、それぞれのポイントをしっかりチェックしておきましょう」と話します。
ここからは「共用部分」「間取り」「水まわりの設備」「断熱」のそれぞれのチェックポイントや、リフォームで改善できるのかを解説します。
共用部分は不動産会社に劣化具合を確認してもらう
マンションの場合、壁や床、天井を形作っているコンクリートの表面から部屋側の空間は「専有部分」、それ以外の空間や設備は「共用部分」と定義されています。例えば、外壁や給排水の縦管、屋上、外廊下、エレベーター、ゴミ置き場などは共用部分に含まれます。
共用部分に関しては、部屋の持ち主には所有権がないため、個人の判断で、リフォームなどで性能を改善することはできません。
「マンションの共有部分は、管理組合が主体となって、大規模修繕と呼ばれる計画的な修繕を行い、傷みや劣化を改善する必要があります。物件選びの際は、大規模修繕がしっかり行われて、共用部分の機能が不具合なく適切に保たれているかどうか、不動産会社に確認しましょう」(尾間さん)
将来を見据え、家族が増えるケースを想定して間取りチェック
マンションを選ぶ際は、現状の不満点を解消するだけでなく、先々を見据えてリフォームがしやすい構造かどうかが重要になります。
「例えば子ども部屋を設ける場合、子どもの独立後も考え、壁ではなく可動式の家具で部屋を仕切るなど、可変性の高い間取りなら、長く快適に暮らせます。購入時にリフォームを行う場合、間取り変更がしやすい構造のマンションであれば、自分たちの暮らし方に合わせた家づくりがしやすくなります。中には、間仕切り壁がコンクリートでできていて、移動ができない構造のマンションもあります。そのような場合は間取り変更に制限が掛かることを知っておきましょう。壁を取り払う間取り変更などのリフォームを考えているなら、やはり物件選びの際に、不動産会社やリフォーム会社などの専門家にチェックしてもらうのがいいでしょう」(尾間さん)
水まわりの設備は使い勝手で選ぶ
キッチン、バスルーム、洗面所、トイレなどの水まわりの設備は毎日使うものなので、生活の快適さに直結し、設備によって暮らし方まで大きく変わります。
「物件選びの段階では、実際に使うことはできないため、入居して実際に設備を使ってみてから不満が発覚することが多いと思います。また、キッチンやバスルーム、洗面所などは、好みや理想に応じて、レイアウトごと変更したいという人が多い場所でもあります。そのため、水まわりのレイアウト変更が可能かどうかもチェックしておくといいでしょう。床下に空間があり配管の移動がしやすい構造なら、お風呂を大きくしたり、キッチンを対面にしたりといったリフォームが実現しやすくなります。水まわりの移動がしやすい構造かどうか、不動産会社に確認をしておくと安心です」(尾間さん)
家全体の断熱性能を左右する窓をしっかり確認する
冬は寒いのが当たり前、と考える人は多いですが、家が寒いのは、断熱性能に問題がある可能性があります。実は外の気温が低くとも、断熱性能がしっかりしていれば、家の中はそこまで冷え込まないものだそうです。
「物件選びの段階で断熱性能をチェックするには、まず部屋の窓ガラスを確認しましょう。断熱性能の基準は地域によって異なりますが、関東地方の場合、窓ガラスが2枚になっている複層ガラスが使われていれば、寒さを防いで快適に暮らせると考えていいでしょう。窓ガラスが1枚の物件でも、コンクリートの内側部分である専有部分で断熱性能を向上させるリフォームが可能です。断熱性能を高めたいなら、内窓を取りつけたり、断熱性に優れた窓ガラスに交換したりするのが手軽でおすすめです。ただし、交換できる窓ガラスには条件がありますから、マンションの規約などを事前によく確認してください。また、結露しやすい北側の壁に断熱壁パネルを貼ると、寒さと同時にカビ対策もできます。断熱性能は自分の室内のリフォームだけで向上させやすいので、気になる方はぜひ行ってみてくださいね」(尾間さん)
共用部分以外はリフォームで改善可能
ここまで4点のポイントのチェックの仕方を解説しましたが、共用部分以外はリフォームで改善可能ですので、気になる部分がある場合はリフォームも検討してみましょう。ただしマンションには管理規約があり、それに沿ってリフォームの計画を立てる必要があります。そちらも併せて確認しておきましょう。
「間取りやレイアウトを変更すれば部屋を広くできますし、レイアウトを変更せず設備を最新のものに入れ替えるだけでも、『コンパクトで収納が多く使いやすいキッチン』『掃除がしやすいトイレや洗面台』なども実現可能です。ぜひリフォームも視野に入れながら、物件選びをすることをおすすめします」(尾間さん)
改善しやすい設備からリフォームしていくのが吉
物件選びの段階では、共用部分の性能と、リフォームやレイアウト変更がしやすい構造かどうかをチェックしておきましょう。
「健康で快適な生活を送るために、水まわりと断熱性能は、早めにリフォームしておくといいでしょう。特にトイレは必ずやっておくことをお勧めします。キッチンやバスルームは、実際に住んでみて不満を感じたらリフォームする…という形でもいいと思いますが、家族全員が毎日使うトイレは、新しいものにリフォームすると毎日が本当に快適になります。掃除が楽になり、暮らしやすくなるのはもちろん、新しいトイレは本当に気持ちがいいものです。中古マンションを長く快適に住める家にするために、断熱性能とトイレのリフォームを検討してみてくださいね」(尾間さん)