リノベ経験者に聞く。トイレが「人に見せたい場所」になるって本当ですか?
理想の家を実現できるリノベーション。リビングやキッチン、ベッドルームなどのメインスペースに情熱と愛情(とお金)を注ぎたい人は多いでしょう。
そんなリノベのプランニングで、こだわりたい気持ちはあっても、意外と後まわしになりがちなのが「トイレ」。
家の主はもちろん毎日、たまにはゲストも使用する場所ではあるものの、使用時間は短いし……ということで、つい他の空間にばかり気を取られがちだったりします。
でも、本当にそれでいいのだろうか?
ということで今回、5年前に中古マンションのリノベを行い、連載「リノベーションストーリー」にも登場してくださったフリー編集者の徳島久輝さんのお宅で、リノベのこだわりをうかがいました。
細部にまでこだわった徳島さんは、もちろんトイレや水まわりにも妥協はありません。
そこで私たちが学んだのが「トイレ空間をプランニングするって大切なことなんだ……」ということ。
トイレにこだわるって、いったいどういうことなの?
マンションを買ってリノベーション、特にこだわったところは?
ホテルライクな暮らしを目指して
リノベをする上でまず決めたのは「テーマ」です。
もともといろいろなホテルに宿泊するのが大好きだったので、ホテルのような空間をテーマに、建築家に依頼をしました。
部屋は仕切らずに、開放感を大切にすること。寒がりなので寝室は仕切りたかったんですが、それをガラス張りにする建築家のアイデアで、光をうまく取り入れています。
クローゼットや棚は造りつけで、収納アイテムにお金をかけない
こだわったことといえば、収納アイテムはほとんど造りつけてもらったという点ですね。
空間に合った家具を探すとなると、時間もお金もかかってしまいます。それなら収納スペースをあらかじめ造ってもらった方が経済的だし、統一感が生まれます。
すべての収納をリノベのタイミングで造ってもらったことで、隠すもの/見せるものの棲み分けがきちんとできているなと思いますね。
キッチンや洗面化粧台は、身長にジャストフィットで
キッチンや洗面化粧台のワークトップの高さも、自分の身長に合わせて造ってもらいました。僕は背がわりと高いので、賃貸や既成品だとストレスになってしまうことが多くて……。
せっかくリノベをするんだからと、細かいところにまでこだわりました。
この部屋に住んでから、暮らしはどう変わりましたか?
家にいる時間が断然長くなりましたね。出かけるより人を呼ぶことも多くなって。
この家に住むまでは料理をまったくしなかったのですが、友人たちと食材を買い込み、みんなが自由に料理をつくってくれたりして……。そういうのもありがたいです。いつの間にか増えた調理器具のほとんどは、友人たちが持ち込んだものですし(笑)。
僕は主人として場所を提供する係、といったスタイルに最近はなりつつあります。
「トイレは“ピンク”と決めていました」
この部屋で唯一、完全な「個室」として仕切られている場所ってトイレなんです。だからこそちゃんとこだわってつくりたいという思いがありました。
飽きがこないよう、部屋は白を基調にシンプルにしましたが、トイレは扉を閉めれば普段は見えない場所。それってむしろ自由に遊べるということ。
それならばと、思いきって壁を一番好きなピンク色にしたいと思ったんです。塗りの壁だから、飽きてもあとから塗り直せますしね。
トイレ空間について考えるって、幸せなこと
実は、リノベーションをする前は「トイレを気にいる」「気に入らない」なんて、考えたこともなかったんです。
賃貸マンションの場合は、そもそもトイレを選ぶという選択肢がありませんし、家のトイレがどのメーカーかもうろ覚えなくらいですよね。
リノベをすることではじめてトイレ空間について考えることができたのは、幸せなことでした。
以前に友人の家でINAXの『SATIS』を見たことがあって。すごくカッコイイなと印象に残っていたんです。だからトイレを選ぶときも、真っ先に『SATIS』にしよう! と。あとはそのシリーズの中でどれにするか、くらいの選択でした。
性能や機能にも絶大な信頼感があったので、あまり調べないで即決しました(笑)。使いはじめてから「こんな機能があったんだ」と、いろいろ知ったほどで……。
決め手となったのはデザインですね。タンクレストイレのシャープさに憧れがあって、絶対それにしたいと思っていました。
僕のこだわりは、リモコンの文字を日本語でなく英語表記にしたこと。そういう選択肢があるのも気に入りました。
どれが何のボタンかは使えばだいたい分かりますし、外国のホテルのようで、生活感が払拭されますよ。
日々トイレを使っていてどうですか?
無駄なものを削ぎ落としたシンプルなフォルムなので、掃除がしやすいんです。
便座がリモコンで上がるのも、知ったときには驚きました。細かい部分まで掃除が行き届くのはうれしいですね。
壁をピンク色にしたいと言ったら、「じゃあ床は黒で」と建築家の方から提案してくれて。空間にメリハリがついたのもよかった点です。
はじめてわが家のトイレを使う人は、リビングとのギャップにびっくりしちゃいますけどね(笑)。驚きすぎて入れなかったお子さんがいたくらいで(笑)。
トイレが、人に見せたい場所になった
トイレが人に見せたい場所になったのが、なによりよかったと思っています。
これまで賃貸に住んでいて、ただ“与えられたもの”だったトイレって、友人に使ってもらうのがちょっと恥ずかしいというか、人に見せたい場所ではなかった。それに僕はもともとトイレに長居するタイプではなく、本も持ち込まないし、ボーッとすることもありませんでした。
だけど、自ら選んだ『SATIS』のトイレで、壁の色も大好きなものに決めて。そうしたらトイレも大好きな部屋の一部として、愛着のある空間になったんです。
誰かの家にお邪魔して同じ『SATIS』のトイレだと「うちも一緒です!」って言いたくなったり、友人が来たら「そろそろトイレ使わないの?」って聞きたくなるくらい……(笑)。
すべてに妥協せず、こだわり抜いた部屋でクリエティブに暮らす徳島さん。リビングもベッドルームも、そしてサニタリーも愛着を持って暮らせるってとても大事なこと。
トイレを、毎日使う愛すべき部屋の一部としてリノベーションすることで、その後の暮らしは、もっと楽しいものになるはず。
自慢したくなるトイレのプランニングを、いま一度考えてみませんか?
(取材・文 ねこりょうこ)
Photographed by Norihito Yamauchi
この記事は『ROOMIE』2018.03.30より転載したものです。
掲載元記事:リノベ経験者に聞く。トイレが「人に見せたい場所」になるって本当ですか?